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セバシエで切ない(…暗いかも)
シエルが可哀想です。



「ん、あぅ、あぁっ!」


下から突き上げられる度、己の口から耳を塞ぎたくなるような声が漏れる。
自分を好き勝手に弄ぶこの悪魔は、いつだって余裕ぶった涼しい顔をしている。

僕が苦痛で顔を歪めていようとも。




僕とセバスチャンが躯を繋げるようになったのは半年ほど前だ。

ヤツの告白に僕が応じたのが始まり。
だが、僕もセバスチャンが好きだから応じたのであり、応じたことは後悔していない。

それから、セバスチャンと初めて体を繋げるときも、僕が本当に嫌なことはされなかった。

愛しています、と甘く囁かれた。
嘘ではないと何度も確認して、ようやく僕も愛してると返したのだ。


愛しているし、愛されている。 


それなのに。
それなのに。
…それなのに。


──一体、何を間違えたのか。
──一体、セバスチャンは何を考えているのか。


「ぅあ!ぃ、痛い……」


段々、手荒に抱かれるようになった。

この躯では、まだセバスチャンの全てを受け入れることは出来ない。
初めての時、セバスチャンは僕が受け入れることができるようになるまで待つといってくれた。

最近では、無理矢理、すべてを押し入れようとする。


「もぉ、無理だ!も、やめてぇ…っ」
「…まだ、全部入っていないじゃないですか。もう少し…………でっ!!」
「!!!!」


上がりかけた悲鳴を飲み込む。
一気にセバスチャンが入ってきた。

その恐怖で、セバスチャンにしがみつく。

こんなに手荒に抱かれても、まだ好きで。
いつか、はじめの頃のセバスチャンに戻るんじゃないかと期待して。

全ての感情を押さえ込んで、抱かれ続けた。


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また、手荒に抱かれる。

今までは我慢できていたのに、この日のセバスチャンの言葉で、抑えていたものがあふれ出した。


「やらぁぁっ!!!!」


この夜も、僕は耐えきれずに悲鳴を上げた。
けれど、セバスチャンは激しいピストンを続ける。
もう、シーツは血液と精液でグチャグチャだ。


「…ローション足しましょうか?」


首を横に振った。


違う。
そんなものいらない。

僕がほしいのは…っ!!


そう思ったときに、セバスチャンの声が聞こえた。


「嗚呼、困りましたね…。貴方が私を受け入れられないのなら、もう浮気でもするしかありませんね」


それを聞いた瞬間、耐えていた涙がこぼれた。

今まで決して涙を流さなかった僕の涙に驚いたのか、動きが止まる。


「僕は、お前の玩具か?」


あふれる涙はそのままに、目の前の悪魔に問う。


「…お前、こんな風に泣く僕を見たかったのか?」


涙は収まるどころか勢いを増し、ポタポタとシーツう上にこぼれていく。


「浮気でも、もう何でもいい…っ!!」


口を開くと、止まらなかった。


「僕は、女性にはなれない!本当なら、お前を受け入れることなんて出来ない躯なんだ!」


愛してる。
愛してる。
愛してる。

なのに、お前は違うのか?

あの台詞が、僕を試すためだったとしても。
心ではこれっぽっちも思っていなかったとしても。


「…馬鹿にするにもほどがある!!!!」


僕に止めをさすには十分だった。


「もう、終わりにしないか。」



さようなら、僕が今でも愛している悪魔。


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セバシエでシリアス


セバスチャンのことが好きだった。

悪魔としてしか見ていなかったあの男への想いを自覚したのはいつだっただろう。


「何で、あいつなんだ…」


脳裏には、ほんの数時間前の出来事が蘇る。


━━━

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「…好きです」


言われた言葉を理解するのに少し時間はかかったけれど、どんな意味で?なんて聞くことはしなかった。
できなかった。


「セバスチャ…」

「……好きなんです」


もう一度言われて、あぁ、本気なんだ、と思った。

セバスチャンは熱の篭もった目で、じっと僕を見つめてきた。

僕だってそこまで鈍感じゃない。


涙が零れそうだった。
ずっと大切にしまっておこうと思っ た気持ちを、外に出してもいいんだって思えた。


──僕もだ、セバスチャン。


どれほどの覚悟で言ってくれたのか。
手袋が破れるんじゃないかと思うくらい強く握りしめた、セバスチャンの手が震えている。 


嗚呼、僕のためにそんな痛い思いしないでくれ。 


自分の想いを告げて、その手に触れて、微笑んで、セバスチャンの想いを受け入れれば。
嬉しそうに微笑みながら、抱き締めてくれたのだろうか?



夢にまで見た光景を思い浮かべた瞬間、うるさく警鐘が鳴り響いた。
大きく頭を振る。



僕は、そんな夢を見たらいけない。
その手を取ってはいけない。
やめろ、ダメだ。


僕じゃダメなんだ。


想いを伝えたいと暴れる恋心を無理矢理押さえ込んだ。 


「止めろ、二度とそんなことは言うな。僕は、お前のことなんて何とも思っていない」


絶望にも似た顔をしたセバスチャン。

本当は、好きなんだ。
そんな顔、してほしくない。

嫌い、なんて言えなかった。
拒絶には、もっとも適した言葉だろう。


でも、僕にとっては偽りでも、告げてしまったらセバスチャンの中でそれが事実として受け止められてしまう。
それは、絶対に嫌だった。


それでも、どうか。
この拒絶が、お前に届きますように。

肉親を亡くしたときにすら出なかった涙が、頬を伝った。



━━━━

━━━━━━━

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「はぁ…」


気まずい空気のまま、afternoon teaの時間になった。

早々にセバスチャンを部屋から追い出し、一人で紅茶を啜る。
その紅茶をみて、セバスチャンの瞳を思い出す。


「くそっ!」


ファントムハイブ家当主として品がない言葉を吐き出し、残った分を一気に煽る。

思い出すのは、嫌でもセバスチャンのことだ。


(僕ではあいつを幸せにできない。…だって、僕はこんなにも汚れているんだから)


あの一ヶ月で受けた陵辱。
作り替えられた躯。

きっと、セバスチャンはそれでもいいと言ってくれるだろうけど。

僕は幸せになってはいけないんだ。


(とにかく僕に、お前に愛される資格なんて。愛してもらえる資格なんてないんだ)


感覚が蘇る度に実感する。


「…好き、だ。…好きなんだ」


僕なんかが言ってはいけない言葉だけど。

誰もいない今だけは口にさせて。



僕は、本当は。

セバスチャンの隣で、幸せに笑いたかった。


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