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「....何を言っているのです?」

低い、僕を責めるような響きを持つ声に体が震える。それでも先ほどの台詞を撤回する気はなかった。紅茶色から紅色に染まった....悪魔の本性を表し始めた瞳を見つめ返す。

だって、もう限界だから。

抱かれている時だって、いつもお前の瞳は冷めている。その瞳を見たくなくて、いつも目を逸らしていたことにきっとお前は気付いていない。
呼吸も衣服も乱れていない。いつも僕ばかり乱れている。好きなのも、苦しいのも、セバスチャンを想って悲しいのも、切なくなるのも。絶対に僕だけ。

ほら、今だって餌が自分に背いて離れていくのが気に入らないだけなんだろう?どうせ抱いたことも契約の一環、もしくは魂の味付けかつまみ食いなんだろう?
セバスチャンが僕と同類の想いを向けてくれるから、僕の台詞に怒ってるんじゃない。

「セバスチャン」
「....」
「....疲れた」

僕だけだ、という関係に。
いつもいつも、お前が頭から離れない。恋は盲目とはよく言ったもので、セバスチャンが絡むと冷静ではいられなくなる。自分が保てない。

「苦しいのも、もう飽きた」

届かないと分かりきった手を、何度伸ばした?セバスチャンは払い落としもしなければ、その手を取ることもなかった。ただ、無表情にその手を見つめているだけだった。
届かないと分かりきった想いを、何度伝えた?その度に返ってくるのは無関心だけだと思い知らされていたのに。

「....っ、お前は」

ほら、何も言わないのが答えじゃないか。
面白かったか?滑稽だっただろうな?脆弱な人間の子供が自分の事でもがき苦しみながら堕ちていくのを見ているのは。

「愛してくれたことなんて無かっただろう?」
(体だけでも繋げていたい。いつか、愛して欲しい)

そう思っていたのはそう昔では無いはずだ。
でも、体だけでもいいと思えるほど大人でもなかったし、何より想いが肥大しすぎた。
愛してくれると夢を見られるほど子供でもなくなってしまった。

「だから、終りにしよう」

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限界が近かった。




僕らが出逢って3年。
想いが通じて付き合いはじめて2ヶ月。



キスはしてくれる。僕もする。
抱きしめてくれる。僕もする。



「セバスチャン」
「何でしょうか、坊ちゃん」



夜会から帰るとき、車の中に漂う女物の香水の香り。
どこかのご婦人の移り香。
それも、毎回香りが違っている。

冷えた僕の指先は、セバスチャンに手を伸ばそうとして留まる。
冷えるのは、セバスチャンがどこかへ行ってしまうから。
僕を会場に残して、どこかのご婦人と。
僕の...男の身体と、女の身体では比べるまでもない。
体を繋げようとして迫った時も、やんわはぐらかされ、半ば強引に体をつなげた。
それも、一度だけだ。


(気づきたくなかった)


だって、セバスチャンが僕以外の人間と関係を持っていることが分かっても。
繋ぎとめておく術がなくても。

僕はセバスチャンを愛してしまっているのだから。
一方通行の想いに苦しめられるだけの日々に終止符を打とうとした。
これで忘れるんだって。



なのに。







どうして。







「...え」









「伯爵、あなたは妊娠されています」








ああ、神様はどれだけ僕が嫌いなんだろう。

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坊ちゃんと身体を繋ぐようになってから半年。
やめなければ、離れなければと思うのに、ここまでズルズルと続けてきてしまっている。

身を清めた坊ちゃんはいつものようにすぐ眠ってしまう。
私もいつもならすぐ自室へと下がるのだが、最中に様子がおかしかった坊ちゃんが気にかかり、部屋にとどまった。


最中でさえ泣くことがない坊ちゃんの涙。

『…ふ、っ、あはははははっ!』

アレは何だったのだろうか。
サーカスの時と同じだ。底にナニかを隠している、悲痛な声。


『お前が好きだ、セバスチャン』


すべてのきっかけとも言えるこの言葉。

驚きはしたが、そこでようやく自分が抱いてきた感情の正体に気づくことができたのだ。


魂の執着以外の、この感情を。


━━━そして、怖くなった。

貴方が離れていくことが。
貴方をいつかこの手で殺すことが。
貴方に関する、何もかもが。


『では、私と“このような事”をしてもいいというのですね、貴方は』

押し倒してこういえば、トラウマのある坊ちゃんなら私を拒絶すると思った。
拒絶して欲しかったのだ。

なのに。

『…ああ』

トラウマを超える想いを私に向けてくださっている。
その事実を突きつけられた。

(あのときの声も、もしかしたら…)

あの笑い声の様に、悲痛に満ちたものだったかもしれない。

だって、貴方の顔には。
絶望と、悲しみと、哀愁と、諦めが浮かんでいたから。


好きだ、と。
愛している、と。
告げられなかっただけなのに。


「なあ、セバスチャン」





「はい?」







お願いだから、






「もう終わろう」







傍にいて。




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タイトルは確かに恋だった様からお借りしました。
ぬるい性描写ありです。






「っあ、ひぅっ…セバ、チャ……」

セバスチャンと身体を繋げるようになって半年程経っただろうか。
僕はずっとセバスチャンが好きだった。
ある夜、この想いを伝えたい衝動に駆られた僕は、就寝の準備を終え下がろうとしたセバスチャンに言ってしまったのだ。

『お前が好きだ、セバスチャン』

拒絶されるかもと思っていた。
拒絶してくれれば良かったのに。
誤魔化されるかもと思っていた。
誤魔化してくれれば良かったのに。

だって、セバスチャンはこう言って僕を押し倒したのだ。

『では、私と“このような事”をしてもいいと言うのですね、貴方は』

初めて抱かれたのは、この時だ。
乱暴ではなかったが優しくもなかったと記憶している。

ここで何となく察してもらえると思うが、僕たちは恋人ではない。
片方が思いを寄せていても、想い合っていなければそう呼ばないからだ。
そして、セバスチャンは僕のことを“契約者”位にしか思っていない。

(そろそろ、潮時かもしれないな…)

いい加減疲れたのだ。
叶うことのない想いを抱き続けて何になる?
これ以上期待などして傷つきたくない。

もう、これ以上は…。

不意に頬が冷えて、不審に思いそこに触れるとしっとりと濡れていた。
そしてようやく、自分は泣いているのだと気付く。

「…っふ、あははははは!」
「坊ちゃん?」

嗚呼、何てザマだ。
セバスチャンに何とも思われていなかったとしても、僕はセバスチャンへの想いを断つことなど出来ないのだろう。
想いが届くことはないのなら、せめて身体だけでも繋げていたい、なんて。

女々しい自分が嫌になる。

「何でもない。さっさと終わらせろ」
「…御意」

どうか、いつか。
セバスチャンに愛して貰うことが出来ればいい。


叶わぬ願いを押しやるように、目の前の快楽へ身を委ねた。

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bad endです。
そして短いです。
それでもよろしい方はどうぞ。




『契約者に恋をする』

悪魔の、禁忌の一つ。
風の噂で聞いたときには、鼻で笑った。

(悪魔が脆弱で、自らよりも劣る、人間などに…)

恋をするはずがないと。



『絶対なんて絶対に無い』

この世の最大の矛盾。
不変のモノなどあり得ない。

(だって、何だって常に変わり続けているから…)

気持ち─感情─だって、例外ではない。



お互いに惹かれ合った。

姿が見たい。
声を聞きたい。
触れたい。
側にいたい。

──彼にどう思われているか、知りたい。



「…坊ちゃん」
「僕は、セバスチャン。お前のことが…「それ以上は仰らないでください」」


拒絶をおそれながらも、迷いの無かった瞳が揺れる。


「…人間ごときが、何を言っているんですか?」


違う。
こんなことが言いたかったのではない。


「私に何を望むというのです?」


望んでいるのは私の方だ。
ドロドロと濁った欲が体を渦巻いているくせに。

本当なら、あなたが告げたい告白。
それに、イエスと答えてしまいたい。


『恋い慕われた契約者は、契約した悪魔に殺される』


…答えられない。
応えられない。

一瞬の幸せでいいから、この手にあなたを捕らえたい。
だが、私はソレを許しはしない。


「私はあなたを愛しませんよ」


嘘をつくな、という命令を、初めて破った。


美学より、あなた。

美学。
矜持。
理性。
身体。


何が傷ついたって、崩れてしまったって。
あなたは傷つけたくない。


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