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セバシエで片→両想い
(コレが最高のBAD ENDの続きです)


どうしようもなく、切ない。
突き放したはずなのに、どうしてこんなに惹かれてしまうんだろう。


「それ以上言うな」
「……」
「僕は、お前のことなんて何とも思っていないと、何度言えばわかる?」


恐らく、奴が傷つく言葉を吐き捨てる。


「僕の思いがそれ以下になることはあっても、それ以上になることはない」


無言で僕を見つめるセバスチャン。
その視線に耐えきれず、身を背ける。

僕は、セバスチャンの温もりを知ってしまったら、きっと離れられない。
近い未来、僕はセバスチャンに喰われ、セバスチャンは新しい主を探すだろう。
もしかすると、僕のように、その人間を好きになることだってあり得るのだ。

温もりを知ってしまうことが怖くなる。
失ってしまうのなら、最初から知らない方がいい。


セバスチャンは人前にでると、多くの女性に囲まれる。
彼女たちの多くは、セバスチャンの執事という身分は見ぬ振りをして、あわよくば愛人として囲ってしまおうと思っている女ばかりだ。
奴が、そんな誘いに乗ることはないとわかっている。

だけど。

セバスチャンを突き放したのは僕なのに。

セバスチャンを拒みながら、側にいたいなんて僕の傲慢な我が儘だ。


(僕は幸せになってはいけない。だけど、本当は…!!)


「もう下がれ、僕は寝る」
「…Yes, My Lord」


パタンとドアが閉まり、重く響く足下が完全に聞こえなくなると、自分の双眸からとめどなく涙があふれてくる。


(セバスチャン、セバスチャン…!!)


口には出来ない想い人の名を、心で叫ぶ。
口にすれば、彼が来てしまうから。


「…っく、ぅう」


嗚呼、なんて愚かなんだ。
不変を望んだのは、紛れもなくこの僕だというのに。
知りたくなかったはずの温もりが欲しくて。
彼を完全に自分のものに出来ない事実が苦しくて。


「…坊ちゃん」
「!!!!」


退室したはずのセバスチャンの声に驚く。


「坊ちゃん」


やめろ、僕を呼ぶな。
浅はかで愚かな願いがあふれてしまうから。


「坊ちゃん」


…居なくならないで。
…僕のもので居て。


「何故、泣いているのです?」
「お前には、関係ない」
「坊ちゃん」
「何でもない!離…ぃたっ!」


手を引かれ、腕の中に閉じ込められる。


「あなたが好きです、シエル」


反則、だ。

幸せになってはいけない、幸せに出来ない。
なのに、そこに幸せしか求めない自分に嫌気がする。


「坊ちゃんは、私のことを何とも思っていないと仰いましたが、私は坊ちゃんを愛しています」

「貴方以外考えられません」


その言葉で、ゆっくり、両手をセバスチャンの背中に回して抱きついた。


「…きだ、好きなんだ。セバスチャン」


僕は、自分が傷つきたくなくて避けていた。


「いつか、お前がほかの誰かと契約して、僕のものではなくなると想像したら、お前を好きになる程苦しくなっ…っく、ぅ」


こらえきれず、溢れてくる涙はそのまま、さらにセバスチャンにしがみついた。


「私は、これから未来永劫、貴方意外のものになる気はごさいません」


その言葉が嘘じゃないことは、僕が一番よく知っている。



悩みも不安もまだまだ尽きない。
だけど、セバスチャンの幸せそうな顔を見て。
当たり前のように紡がれた言葉を聞いて。

全てをこの悪魔に委ねてもいいと思った。


いつか、振り返ったとき。
甘く儚い絵空事と化してしまっていたとしても。

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